☆☆☆

結局希彩ちゃんを殺す事はできなかった。


だけど、あたしが渾身的に颯に付添う事で、確実に颯の心はあたしへと傾いて来ている。


それだけで、とりあえず今は満足しておくのがよさそうだ。


翌日学校へ行くと、杏里が頬を赤らめてあたしに話しかけて来た。


「純白、聞いて聞いて!」


グイッとあたしの手を引っ張り、教室の後ろまで歩いて行く杏里。


「どうしたの?」


そう聞くと、杏里は少しうるんだ眼であたしを見上げて来た。


その表情はとても可愛くて、女のあたしでもドキッとしてしまった。


「あのね純白……あたし、彼氏ができたの……」


小さな声で恥ずかしそうにそういう杏里。


「えぇ!?」


思わず大きな声になってしまうあたしに、杏里が慌てて「しー!」と、なだめる。


杏里の顔はもう耳まで真っ赤だ。


「おめでとう杏里。すごく頑張ってたもんね!」


「うん……」


杏里は嬉しそうにほほ笑む。