元々やせ形の颯は、これ以上痩せなくてもいい。


「ほら、ちゃんとヒゲも剃って」


普段から無精ヒゲを気にしない颯は、今はもう伸び放題になってしまっている。


「そんな気分じゃないんだ」


嫌そうに顔をしかめてそういう颯。


「希彩ちゃんが目覚めた時に、颯だって気づかないかもしれないよ?」


あたしがそう言うと、颯は少し迷ってからカミソリを手に取った。


こんな場面でも希彩ちゃんの名前を出さなきゃいけないという事に、腹が立つ。


でも、今は仕方がない。


希彩ちゃんがさっさと死んで、颯がそのショックから立ち直るまで、ジックリ待つ必要がある。


自分が考えた計画だったけれど、希彩ちゃんが死ななかったという大失敗のお陰で随分と時間がかかりそうだ。


颯が外の洗面所でヒゲを剃っている間、あたしはジッと希彩ちゃんを見ていた。


どうしてさっさと死んでくれないの?