結局、杏里は今年流行っている花柄のワンピースを一枚買って、とてもご機嫌だった。


あたしもいろいろと店内を見て回ったけれど、気分が乗らず買い物はしなかった。


「今日は買い物に付き合ってくれてありがとう!」


別れ際、杏里がそう言ってくる。


その表情は晴れやかで、ウキウキしているように見える。


「ううん。あたしも楽しかった。デート、頑張ってね!」


「うん!!」


杏里は大きくうなずくと、オレンジ色の空の向こうへと駆けて行ってしまった。


杏里の背中を見送り、その場に立ち尽くすあたし。


同じように人を好きになり、同じようにデートをしているあたし。


なのに、どうしてこんなにも違うんだろう。


そう思い、向きを変えてゆっくりと歩き出す。


あたしは颯と付き合う前の気持ちを忘れてしまったんだろうか?


それとも……元々颯への気持ちが間違えていたんだろうか。


あたしは盗撮なんてしないと言い切った杏里を思い出していた。


相手の事を思うからこそ、そんな事は絶対にしない。


杏里からは、自分よりも相手の幸せを願う気持ちがあふれ出ている気がする。


「あたしには、それが足りないのかな……」


あたしは1人でそう呟いたのだった。