____翌日。
その日は仕事が長引いてしまい、9時ごろにアトリエに顔を出した。
扉を開けた瞬間、
見慣れた光景があった。
ペンや紙で散らばったテーブル。
小汚くなってしまったマネキン、
布の端切れ。
・・・わぁ、
あの時の、アトリエだ・・・。
私は思わず感動してしまった。
「やっほー美里〜」
なんて修がパターンをとっているのか、声をかける。
「ごめんね!遅くなって・・・」
私は謝りながらカバンを置く。
「サイズ、
お前の事務所の公式プロフィールのもので問題ないか?」
と旬が布を裁断しながら言ってくる。
うわぁ、作業感に満ち溢れてる・・・。
「うん、問題ないかな!」
まぁ0.5キロほど体重が落ちてしまってウエストも多少の変化はあるがそこまでの変わりようでもない。
今日はどうやら要路はいないよう。
布切ったからこれ仮縫いしろ、
なんて旬が郁斗に指示を飛ばす。
わわ、懐かしい。
あの旬の総監督感・・・!
私はなんとなく郁斗の隣に腰掛ける。
そして尋ねた。
「布、結局どうやって手に入れたの?」
郁斗はミシンに目を向けながら答える。
「・・・あーとね、
結局あれだ、美園行ってきた」
「えっ、いいなぁ。
私も行きたかったなぁ。」
「美里の場合旬とニケツしたかっただけだろ。」
かかっとから笑いする郁斗。
意地悪い顔だ。
「違うよ、もう。」
はぁ、と私はそこでカッとならずに流す。
「最後のショー、ニケツして布調達しに行ったの、懐かしいよな。」
そう郁斗が思い馳せるように言う。
「そうだね〜
郁斗そんときいなったのによく知ってるね。」
確かそのときは私と旬と要路だったはずだか。
「まぁね〜」
なんて意味深な笑みを浮かべてミシンを動かし始めた。
そしてそれからも着々と準備は進んでいった。
みんなの睡眠不足と引き換えに。
幾度かあの最後のショーの前日のように、皆がゾンビ化している姿を見た私であった。


