表通りの本屋の角を曲がって、
真っ直ぐ真っ直ぐ進んで、
一つ目の角を左に曲がって、
また真っ直ぐ進んで。
そこに私の目的地はある。
"Trees cafe "
ここが私たちのアトリエ。
私はドアを開いて。
するとカランコロン、なんて可愛い鈴の音が聞こえて、
そしてすぐに鼻先をくすめるコーヒーの香り。
さいっこう。
久々すぎて涙出そうどうしよう。
「あら!美里ちゃん!
いらっしゃい」
ふふ、なんて笑ってくれたのはカップを磨いていた旬のお母さんで。
「お久しぶりです!」
「旬なかにいるわよ」
そう言ってアトリエの扉を指す。
あぁ、なんていう懐かしき扉なのだろう。
初めてここを通った時、
なんだか異世界の扉を開いたような気がしたなぁ。
「失礼します」
そう言って私は旬ママに挨拶をして、それからがちゃりと扉を開けた。
すると、見慣れた景色が私に飛び込んできて。
様々な色形をした首から上だけのマネキン。
世界のすべての色を揃えたんじゃないか、ってほどのマニキュアが陳列されていて。
テーブルの上にはスケッチブック・・・。
「って・・・あれ?」
私は首をかしげる。
景色が、変わってた。
マネキンもないしマニキュアも、スケッチブックなんて綺麗に揃えられて片付けられてて。
「よお、美里。」
ソファに座っている旬が声をかけてきた。
「お!美里!おひさ〜」
修が私の方向に振り返りながら手を振る。
いぇい!
なんて私も2人にハイタッチして挨拶をして。
そして疑問。
「ねぇ、マネキンとか作業道具全部どうしちゃったの??」
私は旬の隣に腰掛けて言った。
旬はあぁ、と軽く返事。
「ここに置いてあっても使わないだろう。
だから、マネキンはコイツに返却、マニキュアは要路、コスメは郁斗にな。」
そう旬はソファの背もたれに手を預けながら言う。
「そうなんだ・・・」
なんだか虚しい気持ちになった。
アトリエのあの、ちょっと汚い感じが好きだったんだよね。
とてもとても楽しかった日日が蘇る。
また、みんなで作業したいなぁ・・・
そんな思いが私を満たさせた。