数日後、森さんは私に、


「これ確認しといて」


と、書類が入ったクリアファイルを渡してきた。


ファイルには店舗の在庫表が入っていて、


『飛行機のチケット、往復とったからな』


と書いてある付箋がついていた。




それを見た私は思わず、


「えーっ!」


と、声をあげてしまった。



「どうしたの、坂本さん」


「だいじょうぶ?」


みんなからいろいろ聞かれ、


「すみません、なんでもありません」


と謝りながら森さんをこっそり盗み見ると、必死で笑いをこらえていた。






お昼に向かう森さんをつかまえ、誰もいない会議室に連れこんで、


「どういうつもりですか?」


と聞いたけど、森さんは涼しい顔で、


「あれぐらいしないと、優花は決心しないだろ?


続きはメシ食べながらにしろよ、俺ハラ減ってんだよね」


と、私の顔をのぞきこみながら、


「それとも、こんなとこに連れこむってことは、なんかしてくれんの?」


ニヤニヤしてからかってきた。


「そんなことするわけないです!」


「そんなことって、なんだよ?」


「え、えーっと・・・とにかく、何もしません!」


「土屋さんたちは展示会だろ、優花はどうすんの?


おごってやるから行くぞ」