誕生日が過ぎたら、両親も認めてくれたのか、週末たまに優樹の家に泊まっても、何も言われなかった。


優樹もうちで食事したり、両親と話すのが楽しいって言ってくれて。


合鍵をもらったから、優樹が残業している時は、先に帰って夕飯を作ったり。


優樹の部屋に、私の荷物が少しずつ増えていった。


優樹と私の色に染まってゆく部屋で過ごすのは、嬉しかった。



今年のバレンタインは金曜日で、優樹は女子社員からたくさんチョコをもらってた。


ちょっと、妬けるくらい。


家に帰ってから、


「優花、一緒にチョコ食べよう」


なんて、呑気な声で言うから、ちょっとふくれていたら、


「優花だって、義理チョコ配ってただろ?


俺からしたら、それも少しイヤなんだけど」


子供みたいにイジける姿を見てたら、いじらしくなって怒るのをやめた。


「優花、本命チョコちょーだい」


「どーしよっかなー」


「ないのかよ・・・」


「あるよ、ちょっと待ってて」


レンジで少しあたためた、手作りガトーショコラを渡したら、


「超うまい!」


一気にゴキゲンになるのが、年上と思えないほどかわいかった。




2月最後の週末には、明日香先輩夫婦・ひとみちゃんと彼氏・優樹と私の6人で、一泊スノボ旅行へ行った。


優樹は北海道出身だけあって、めちゃめちゃうまくて、かっこよかった。


私は大学生以来だからコケまくったけど、楽しかった。


温泉付きの宿に泊まって、学生みたいに男女別2部屋に分かれてしゃべりたおした。



そんな楽しかった2月も終わり。


3月最初の月曜に、部長に呼ばれて会議室へ向かうと、優樹がすでに座っていて。


優樹が不機嫌な顔だから気にしていたら。


「坂本さん、今度のシステム変更の際に、うちのPB商品を見直すことになってね。


で、関西支店の渡辺さんに今週の木曜と金曜泊まりで来てもらって、現場の声を聞くことになったから、森さんと坂本さんにも同席してほしいんだ」


「・・・はい」


チラッと優樹を見たら、何か言いたそうな顔してた。



「あの部長、どうして私なんでしょうか」


「坂本さんはずっと森さんと一緒に頑張ってくれてたし、渡辺さんとも研修で一緒だっただろ?


渡辺さんは最近成績がダントツだから、最初の絞り込みをお願いすることになったってこと」


「あ、あの、他にメンバーはいらっしゃいますか?」


「いや、最終決定はまだだから、とりあえずは3人だな。


私も、手が空いている時は参加するけど、何か困る?」


「・・・いえ、別に」


「じゃあ、そういうことだから。


渡辺さんも、坂本さんと一緒ならやりやすいって喜んでたし、よろしくな」



「はい」


部長は、私たち二人を残して先に会議室を出ていった。


優樹は、不満気な顔で黙っている。



「森さん、ごめんなさい」


「謝ることないだろ、決まったことは仕方ないし」


「でも・・・」


「俺は、おまえを信用してるから」



そう言って、優樹も会議室を出ていった。


後片づけをして、会議室の電気を消した時。


これからどうなるのか、不安でいっぱいになった。