その日は、ハロウィン。また、今年もやってきた。3年前のハロウィンから、俺の人生は止まったままだ。
 
「パパ、いってきます!」

 あの日から変わったことといえば、子供の真生(まお)がいることだ。俺と、サヤ―死んだ最愛の人との子供。

「ああ、行っておいで」

 俺は、無理に笑顔を作って、真生を車から送り出す。保育園は今日も送迎の車でいっぱいだ。真生は、今日が母親の誕生日だとよく理解もせず、無邪気に「お菓子をもらえて、かわいい衣装が着られる日」として楽しんでいる。

 あの3年前―サヤの誕生日であるハロウィン―の記憶を手繰り寄せる。俺は、ハンドルを操りながら、記憶を3年前の夜に飛ばした……。