「戸崎さん、浅井さんたちに目付けられたみたい」 「はぁ……」 「あの人たち怒らせると、厄介だよ?」 「……なにが厄介だよ」 俺は吐き捨てていた。 「俺だってムカついてんだ。 喧嘩吹っかけられたんなら、買ってやる」 あの勝ち誇った浅井の鼻っぱし、折ってやる! 俺はやる気に満ちていたが…… 忘れていた。 俺は今、柚なんだということを。 俺は浅井なんて怖くないけど、柚にとってはとてもとても怖いんだということを。