優二君は泣きそうな顔をして、あたしに近寄る。
「柊、マジでありがとー!」
そんな笑顔しないでよ。
あたし、断ろうとしていたのに。
「柊が入ってくれたから、何とかなりそう!」
断れなくなるじゃん!
「柊、今日の放課後早速顔合わせするよ」
「あの……お……俺……」
あたしはビクビクしながら言葉を発する。
「ギターなんて出来ないよ?」
それなのに優二君は嬉しそうに笑っていて。
「練習すればいいって!
柊ならすぐに出来るようになる!」
どんな根拠で言ってんだろう。
「文化祭まで一カ月あるんだぞ?」
一カ月しかないんだよ?
プロのお父さんだって、ライブ前は恐ろしく練習している。
それなのに、素人のあたしが一カ月で完成?
考えれば考えるほど無防だよぅ。
早く断らないと。
話が進む前に断らないと。
だけど、嬉しそうな優二君の顔を見ると何も言えなくなってしまうのだった。
……あたしは、お人好しだ。



