「柚が欲しい」 健吾君はそう言った。 あたしはその時のことを思い返す。 夕陽が健吾君を赤く照らしていた。 あたしもきっと真っ赤だ。 だけど、真っ赤なのは夕陽のせいだけではない。 あたしは耳を疑った。 あたしが欲しい。 それって…… それってもしかして……ーーーー あたしを見る健吾君は真剣な顔をしていて。 ドクン。 お決まりのように胸が鳴る。 あたしは紛れもなく期待をしていた……