「戸崎の父親に迷惑かけるだろ」




静かな健吾君の声で我に返る。

あたしは思わず健吾君を見ていた。

健吾君は優二君を見ていたが、その横顔にドキンとする。




「俺たちが勝手に押しかけるべきではない」




健吾君の言うことはもっともだよ。

地下室にはお父さんの数百万ギターも置いてあるし、お父さんに迷惑かけてしまうかもしれない。



だけどね、




「大丈夫だよ」




あたしは答えていた。



少しでもグループのためになりたいと思ったから。

あたしが出来るのは、これくらい。





健吾君は心配そうにあたしを見て言ってくれる。




「優二の押しが強くて、戸崎が嫌って言えないだろ?」




ありがとう、健吾君。

あたしのこと、本当に心配してくれているんだね。

すごく嬉しいよ。

でもね、




「本当に大丈夫なの」





もっと練習したい。

そして……

もっと健吾君に会いたいんだ。