「じゃあさ、柊。
何か曲弾いてみてよ!」
慎也君が目を輝かせて言う。
「き……聞かせるほど上手くないよぉ」
泣きそうな顔のあたしに、
「いいからいいから!」
優二君と慎也君が迫る。
だから断れなくて。
というより、いずれあたしが下手なことがバレるに決まってるから。
「ごめんね、まだ練習不足なんだ」
あたしはそう言い訳して、練習していた曲を弾いた。
手が痛い。
指の感覚が麻痺している。
でも、弾きだしたら、その曲の世界に入ってしまって。
必死で指を動かす。
すごいよね、こんな細い弦から、あんなに力強くて歪んだ音が出る。
楽しくて、心地よくて。
完全に自己満足になってしまって、下手でもいいなんて思った。
何とか最後まで弾ききり……
ギュイッ……
歪んだ余韻を残してあたしの音は消え去る。
曲が終わったのに、あたしの気分は高揚していた。
初めて楽しいなんて思えた。
下手なのに。
いやいやなのに。
だけど……
しーん……
まるで水を打ったかのように静かになるスタジオ。
一気に現実に引き戻されたあたしの心は震えていた。
やばいよぉ、幻滅された。
絶望的だ。
はやいとこ謝って、次の手を考えないと!



