何も言わず、しゅうは抱きしめてきた。 しゅうのシャンプーの香り。 ふわふわな猫っ毛の髪。 ヤンチャになった証のピアス。 こんな間じかでしゅうを見るのは、久しぶりだから。 あたしまで泣きそうだ。 あの日しゅうを忘れるために、泣いたのに。 「……かすみ」 しゅうが声を低くする時は、甘えたい証拠。 抱きしめ返そうと、背中に手を伸ばしたときだった。 しゅうの首筋に見える、何かの傷跡。 ドクン―…ドクン。 あたしの胸がうるさいくらい、嫌な予感がした。