去年の冬に受けた手術で一時期、調子の悪さも多少は改善した。

けど、過去手術を受けた後に比べると、開胸手術までした割には、あまり改善が見えない気がする。

相変わらず、よく出る不整脈。

きっと、どこかにまた不具合が出ている。
このまま行くと、二年連続で手術を勧められそうな気すらする。



わたしの心臓は手術とトコトン相性が悪い。

毎回、開胸手術の度に冗談抜きで死にかけている。

手術は成功なのに、術後の合併症に苦しめられる。



今度こそ、次の手術では、もう戻って来られないのではないかと、

誰にも言わないけど、

……だけど、そんな思いが頭をよぎる。



心が完全に晴れ上がっているとは、とても言えなかった。



トントン。



ノックの音に我にかえる。



「はい」



返事をすると、ドアがそっと開けられた。



「お嬢さま、起きられてたんですね」



沙代さんが、にっこり笑いながら部屋に入ってきた。



「沙代さん、おはよう」

「おはようございます」



沙代さんは窓際にいたわたしの元に歩み寄ると、そっとわたしの頰に右手を添えた。



「調子はいかがですか?」

「うん。大丈夫」



元気とは言えない。

けど、大丈夫なんだ。いつも通りだもの。



そんなわたしの思いは丸見えみたいで、沙代さんは心配そうに表情を曇らせた。

けど、なにも言わずに、笑顔を見せてくれる。