「ねえ、相談に乗ってくれる?」
夕食後、親父がいないその日を選んで、リビングでテレビを見ていたお袋に声をかけた。
「珍しいわね。もちろん良いわよ」
お袋はニュース番組を消すと、オレの方を向いた。
まだ何も言っていないのに、心なしか嬉しそうだ。
向かいのソファに腰掛けながら、早速話をスタート。
「あのさ、婚約指輪って、どんなものを買えば良いの?」
「陽菜ちゃんに?」
「ハル以外の誰にあげるの」
と言うと、お袋は
「聞いてみただけじゃない」
と笑った。
「プラチナ台に大粒ダイヤモンドの指輪が普通だけど、今時はゴールドのこともあるわよ」
「なるほど」
アクセサリーについては、まったく分からない訳でもない。
今までにも何度か誕生日やクリスマスに、ハルへ贈ってきたから、最低限の地金や宝石の知識くらいはある。
「ダイヤの指輪だったら、どんなのでも良いの?」
オレがそう聞くと、お袋は笑った。
「そういうわけにはいかないわ。婚約指輪に使われるダイヤモンドは普通、特別に良いグレードのものよ」
「グレード?」
「そう。4Cって言うんだけど、Carat、Cut、Color、Clarity。つまり、重さ、輝き、色、透明度。婚約指輪なら、この4つが高いものを選ぶのよ」
「へえ~」
「見てみる?」
「何を?」
「あなたたちのお父様がわたしに買ってくれた指輪」
「見たい!」



