「うん。……ただいま」
オレは両手でハルの手を包み込んだ。
相変わらずに、ひんやりと冷たい手。細すぎる腕。
包み込むオレの手を、ハルが握り返してくれるのをかすかに感じた。
ごめんね、ハル、側にいられなくて。
オレ、何にも知らないで、のんきにメール送ってたよ。
本当にごめんね。
この3日間の自分に蹴りを入れたい気分だった。
「……カ、ナ」
「ん?」
「すぐ、……げん…きに、なる……から」
ハルはオレが落ち込んでいるのを分かってる。
ダメだ。
オレが気を遣われてどうする!?
「……ね、ハル、いっぱい笑える土産話あるよ? お土産も色々買ってきたよ」
オレがそう言うと、ハルはまたかすかにほほ笑んだ。
「早く元気になって、話聞いて? 土産も受け取ってね」
「……ん」
ハルはしんどそうで、それ以上話すこともなく、オレはただハルの手を握り続けた。
早く楽になるようにと、少しでも楽になるようにと、そう願いながら。
「叶太、ごめん。ちょっと不整脈が出てるから、悪いけど、ここまでにして」
気が付くと、後ろに裕也さんが立っていて、オレの肩に手を置いた。
「陽菜ちゃん、点滴、ひとつ増やすね」
はい、とハルは声を出さずに口を小さく動かした。
「ハル、また明日来るね」
オレはハルの髪をそっとなでると、後ろ髪を引かれまくりながら、ICUを後にした。
そうして、オレは決意を新たにした。
ハルに何かあった時に、絶対に、何があっても一番に連絡をもらえる地位についてやる、と。
いつでもどんな時でも、何よりもハルを一番に優先しても、誰にも文句を言われない地位についてやる、と。