「ごめん……ね、こんな、遠く……まで」
「いや、久しぶりに飛行機乗れて、楽しかったよ?」
裕也さんはにっこり笑った。
「お仕事……は?」
「明日は診察は休み」
最初から休みだったのか、誰かと変わってきたかは分からない。
ハルは申し訳なくてたまらないという顔をする。
「……あり…がと」
「どういたしまして。でも、お礼を言うのはまだ早いよ」
こんな場面なのに、裕也さんは完ぺきな医者で、笑顔を絶やさない。
すごいな、と正直思う。
「治療しよっか? 不整脈ひどくて、しんどいだろ? 点滴入れるね。じき、楽になるからね」
その言葉に里実さんがスッと動く。
オレはハルの手を握るくらいしか、できることはない。
裕也さんはスゴイ。
ちょうど、裕也さんが今のオレくらいの年齢の時、出会った。
ハルと同じように、先天性の心臓病を患っていた瑞樹ちゃんのために、裕也さんは医者になった。
確かに、できることが全然違う。
けど、悲嘆なんてしない。
いいんだ。
医者だったら、ハルには、じいちゃんやおばさんがいる。
2人とも専門は循環器じゃないけど、じいちゃんには、こうやって、ハルのために医者や看護師を用意してくれるだけの力がある。
おじさんには、ハルの旅を快適にするために専属の看護師を雇ったり、医者を派遣する財力がある。
オレはハルだけを見ていたいんだから、今、ハルの隣で、ハルに求められるままに、その手を握り返す位置にいられたら良いんだ。



