旅館の車寄せ前では里実さんと養護の先生が待ち構えていた。
「陽菜ちゃん、大丈夫!?」
ほんの15分ほどの乗車で、ハルの具合はすっかり悪くなっていた。
里実さんと養護の先生がオレたちの荷物を手分けして持ち、オレは代金を払い、ぐったりしたハルを抱きかかえた。
ハルの顔をのぞき込む里実さんに伝える。
「疲れてしんどいところに、車酔い」
……今のところは。
「車で2回戻した」
「了解。……とにかく、部屋に行きましょうか」
里実さんは、部屋でハルを寝かせて、酸素濃度計をハルの指に付けると難しい顔をした。
「陽菜ちゃん、酸素吸入しようね」
ハルが潤んだ目を開け、小さく頷く。
呼吸が荒い。
オレの手を離したがらないから、オレは里実さんを手伝うこともなく、ハルの手を握る。
「……つも、……めん、ね」
……いつも、ごめんね。
ハル、オレにそんな気、使うなよ。
一番しんどいのも、離脱で悔しいのもハルだろ?
オレはハルの頭をそっとなでた。
「オレはハルの側にいられるのが、一番の幸せだよ?」
「……ん」
ハルは酸素を吸っているのに荒い呼吸のまま、しばらくオレの手を握っていたけど、やがて、その手がふっと脱力した。
里実さんは眠ってしまったハルの心電図を取ると、また難しい顔をした。
「里実さん、ハル、大丈夫?」
「……ちょっと、微妙な感じ。不整脈が出てる。後、熱が出るかも」
その後、本当にハルは熱を出した。少しずつ上がり、39度を超えたところで、里実さんはじいちゃんに電話をかけた。
夜、最終の飛行機で裕也さんが駆けつけると言う。
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