ハルは数秒オレの目を見て、オレの手を握った。
それから、少しの間の後、コクリと頷いた。
こんなところで帰りたくないだろうに、だけど、わがままも言わず、文句も言わず、愚痴ひとつ言わないハル。
本当は、我慢しないでも良い……と言ってあげたい。けど言えない。限界が近いのが分かるから。
オレはハルをぎゅっと抱きしめ、それから、待ってた2人に手を振る。
「ごめん。オレたち、先に旅館に戻るから、後は2人でまわってもらえる?」
その一言で、すぐに事態を悟り、2人が駆け戻ってくる。
「陽菜、大丈夫!?」
「悪い。歩くの速すぎた!?」
「大丈夫。……念のために、ね? でも、こんなところでごめんね」
ハルは申し訳なさそうに2人に言う。
「ううん。わたしたちは良いんだけど。旅館まで送ろうか?」
「カナがいるから大丈夫」
ハルは優しくほほ笑んで、同行を拒絶する。
もし、ここに里実さんがいたなら、オレまでもが「観光してきて」って言われた気がする。
志穂は名残惜しそうな顔で、
「じゃあ、駅まで」
と言うけど、路面電車はもう十分楽しんだから、後は最速で戻りたい。
「そこらで、タクシー拾うから」
「えーと、じゃあ、タクシーまで!」
何が何でも見送りたい志穂に苦笑しつつ、それで気がすむならと一緒に広い通りに向かう。
タクシーを拾って旅館名を告げ、ハルを先に乗せる。
「じゃあ、また後で! 集合時間に遅れるなよ」
「はいはい。……陽菜、ゆっくり休んでね」
「牧村、後でな」
「うん。本当にごめんね」
「気にしない気にしない」
「閉めますね」
運転手さんの声でドアが閉まり、タクシーは動き出した。
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