だけど本気で怒ってる訳じゃない、ただの冗談なのに、ハルが隣で申し訳なさそうな顔をして、口を挟んだ。
「ごめんね」
ハルの言葉と申し訳なさそうな表情に、ようやく人力車の理由を悟ったらしい。
和樹はしまったという顔をした。
「あー、なるほど。ハルちゃん、歩くの苦手だもんな」
「うん。……この坂はちょっとムリそう。人力車お願いしておいて良かった」
「だよな。うん、しっかり活用して。ムリすんなよ?」
和樹がハルの頭に手を伸ばし、髪に触れる前に、オレがぺしんとはたき落とした。
それを見て、ギャラリーは、
「幸田、おまえ、分かっててわざとやってるだろ」
と吹き出した。
「叶太も相手にすんなよ」
「なあ? 少しくらい触らせてくれたって、良いよな? 減るもんじゃなし」
「……減るし」
「え! 叶太の愛情が!?」
わざとらしく、和樹が大げさに驚いた顔をする。
「それは1ミリたりとも減らないからっ!」
オレが速攻言い返すと、ハルを除く全員が大笑い。
「も……やだ」
ハルだけがオレの背中にしがみついて、顔を隠した。
そう言えば……、と他3名のうちの1人が後ろを振り返り、指さした。
「牧村、この階段もかなりキツイけど、……大丈夫?」
指の先には、長い長い石造りの階段。
それに目をやり、ハルは眉根を潜めた。
「3階分、くらい……かなぁ? が、学校で1年の教室に行くと……思ったら、何とか」



