3人がけの席、ハルを挟んで右と左にオレと里実さん。
志穂と斎藤はすぐ後ろの席だけど、進行方向と反対向きにするとハルが酔うし、何より、現在爆睡中のため、向きは変えずにそのまんま。
「陽菜ちゃん、調子悪そう?」
里実さんが小声でオレに言った。
「どうだろ。良くはないけど……体調が悪いと、多分、ハルは新幹線でも酔うから、寝られてるのは悪くないんだけど」
後ろに声をかけて、ハルの席の背もたれを倒した。
身体に手を触れても、起きる気配もない。
「そっか。長いからね、この距離で酔うとしんどいよね」
続けて、オレが自分の手荷物から薄手のタオルを出してハルにかけるのを見て、里実さんは感心したように言った。
「陽菜ちゃん、愛されてるよね」
「はい。愛してますよ~。ハルはオレの宝物です。……って、物じゃないんだけど」
しれっと告げると、里実さんはバカにすることも照れることもなく、ふふっと笑った。
「頼りにしてるわよ。旅行中よろしくね」
「それは、オレの台詞です。よろしくお願いします」
オレが頭を下げると、里実さんはにこりと笑った。
その、どこか達観したような笑顔に、オレは思い切って言ってみた。
「里実さん、オレ、変なこと聞いても良いですか?」
「いいよ。何かな?」
どんなことを聞くのかとも聞かず、即答した里実さん。
もしかしたら、じいちゃんから何か頼まれているのかもしれない。
里実さんの旦那さんも先天性の心臓病で、ハルと同じように子どもの頃から運動制限があると言う。
一応、仕事もしているけど、決して無理はできないらしい。
いわば、里実さんはオレの先輩。
それなら、一番聞きたいのはこれでしょう?



