それを見たオレが黙っていられるはずもなく、すぐさま和樹の手を払い落として、
「オレのハルに触らないで欲しいな~?」
と、椅子に座るハルを後ろから抱え込んだ。
それを見たクラスの女子たちがキャーキャー大騒ぎ。
「……もお、」
ハルは真っ赤になってうつむいた。
「ははは。ほら、ハルちゃん。こんなに自分にベタ惚れの彼氏なんだから、遠慮なく頼ってやれよ。
で、もちろん、オレにも遠慮なく頼ってね?」
和樹がそう言うと、斜め前の席の女子、河合律子も振り返って一言。
「志穂で頼りなかったらいつでも言ってね。女子力なら、わたしのが高いわよ」
「ちょっと~、りっちゃん、それどう言う意味?」
「朝、髪がうまくまとまらなかったら、志穂、巻いたり結ったりできる?」
「……できません」
志穂が降参と言うように手を挙げると、ドッとクラスが湧いた。
志穂の髪は一年の時と変わらずショートボブでだけど、その髪の一部が明後日の方向を向いているのは、割と頻繁に目撃される。
「ハルちゃんの髪、ふわふわで気持ちよさそうだよね。修学旅行中、一回触らせてよ」
「あ……うん。わたしも髪の毛結んだりとか苦手だから、お願いします」
ぺこりとハルが頭を下げると、
「意外。得意そうなのに」
とは律子のコメント。同意する声が多数上がった。
ハルはいつも綺麗に髪を編み込んだり結ったりしているけど、それは沙代さんの作品だ。
「えっと……普段やってもらってるから慣れなくて。自分でやる時は、後ろで一つか下ろしっぱなしにしちゃう」
「よーし。可愛くしてあげるから! 楽しみにしてて! ね、広瀬くん?」
え? おれ!?
最後の言葉に笑いが渦巻く中、修学旅行前日の授業は始まった。
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