だから、誰もそのことではハルを叱らなかった。

けど、ハルが夜中に具合が悪くなると、みんなが目覚める朝まで我慢しようとする癖があることについては、おばさんからガッツリお説教されたらしい。

オレの立場だったら言わない訳にはいかないと、ハルは分かっている。
だから、文句は言われなかった。

ハルは一言、



「言わないで欲しかったのに」



とだけつぶやいた。



お説教はされたけど、ハルは、きっとこれからも我慢で済む間は誰も呼ばないのだろう。

家に一人きりで、もしもの事態が頭をよぎりでもしない限り、これからだってオレは呼ばれない。
ハルは一人でツライ夜を過ごすのだろう。

オレで良ければ、いつでも呼んで欲しいと思う。
だけど、同じ家に住む家族にすら遠慮するのなら、切羽詰まらない限り隣の家にいるオレを呼ぶ道理はない。



……もっと側にいたい。

いつだって、側にいたい。



具合が悪いのなら、どんな時でも介抱したいし、それで少しでも楽になるのなら何時間でも背中をさすってあげたい。
ハルが何も言ってくれないのなら、いつだってハルの不調を感じ取れるくらい近くにいたい。



ハルの隣に……、

いつだって、ハルの隣にいたい。



誰はばかることなく、誰にも気兼ねすることなく、ハルの隣にいたい。

一番近い距離にいるのは、いつだってオレでありたい。



オレはその日から、いつかは……と思っていたハルとの結婚を、大幅に前倒しすることを真剣に考え始めたのだった。