「……あの、」



テンパったオレがムリヤリ口を開き身体を起こすと、おじさんも、



「ん?」



と、オレを覗き込んでいた身体を起こして、腰に手を当て仁王立ちになる。

い、威圧感、半端ね~!!

何か言おうと口を開きつつも、オレが言葉に詰まったその時、ハルが、



「……う、ん」



と小さく身じろぎした。
起き上がった拍子に、つないだ手が外れたからか、ハルは心許なさそうにオレを探す。



「……カ、ナ?」

「いるよ」



とっさに、オレがハルの手を取ると、ハルはうっすらと目を開け、ふわぁっと笑みを浮かべた。

可愛い!

こんな時なのに、オレは自分が置かれた状況をすっかり忘れて、ハルの頭をそっとなでた。



「気分はどう?」



オレがハルに向けるとろけそうな笑顔を見て毒気を抜かれたのか、頭の上からはおじさんの大きなため息が降ってきた。

結局、使いっぱなしの酸素マスクの存在だったり、片づけそびれたトイレのハルが戻した跡だったりで、誤解はすぐに解けた。

とは言え、おじさんにはこっぴどく怒られた。
そういう時は、ちゃんと隣の家のじいちゃんを呼べって。
少し遅れて登場したおばさんはニヤニヤ笑いながら、オレをこづいた。

沙代さんの不在は、夕方、お母さんが倒れて危篤と連絡があり、急遽駆けつけたからだった。
ハルを心配した沙代さんを、後は夕飯を食べて寝るだけだから大丈夫だと送り出したのは間違っていない。
沙代さんは、そのおかげで、お母さんの死に目に会うことが出来たと言う。