「……えーーーーっ、と」



翌朝、目を覚ましたその瞬間、オレの頭は真っ白になった。

いわゆる絶賛フリーズ中。

隣には、すやすや眠るハル。
腕ではなく、今はオレの右手をきゅっと握り、頬に当てたままにハルは眠る。

明け方、呼吸も落ち着き楽になったのか、鬱陶しそうにハルは酸素マスクを外した。
オレは手を伸ばしスイッチを切ると、マスクを広いベッドの端、ハルが寝るのに邪魔にならない場所に移動させた。



いや。

はっきり言って、そんなことはどうでもいい。



問題は目の前の人で……。



「叶太くん、これはどういうことかな?」



お、おじさん、笑顔が怖いからっ!!



ベッドの横に立ち、ヘッドボードに手をかけ、貼り付けたような笑顔でオレを見下ろすのは、ハルの親父さん。
ハルを目の中に入れても痛くないほど溺愛する、ハルの父さんだった。



「説明してくれるかな?」



笑顔なのに、目は笑ってない。

完全に怒り心頭って感じで、一見静かな語り口と笑顔の迫力たるや半端ない。

確かに状況だけ見ると、親がいない間に同衾する恋人同士に見えてしまう。



いやいやいやいや、おじさん、違うんだ~!!



と言いたいのに、蛇に睨まれた蛙が如く、オレの思考は凍りついたままだった。



「叶太くん?」



おじさんが貼り付けたような笑顔でオレに笑いかける。
その目が早く答えろと言っていた。



ああああ!!



確かに、この人は明兄の父親だ!
怒りの質がどこか似ている。



っじゃなくて!!