「ハル、酸素、用意するな」
とりあえず、オレは自分が出来ることをするしかない。
用意した酸素マスクで口元を覆いスイッチを入れると、ハルはホッとしたように表情を緩めた。
それでも、相変わらず具合は悪そうで、少しの身じろぎの後にも、目をきゅっとつむって眉間に皺をよせる。
オレはまた、そっとハルの背中に手を伸ばした。
ゆっくりと、その手を動かすと、
「……ありが、と」
ハルがうっすらと目を開けた。
「どういたしまして」
オレは笑顔で応え、ハルの頭を優しくなでた。
笑顔を心がけたけど、心配が先立ち、本当のところ上手く笑えていたか分からない。
ムリにしゃべらなくて良いのに、ハルは荒い息の下、言葉を続けた。
「……後は、……一人で、」
大丈夫……と、ハルが続けようとしたのが分かり、オレは最後まで言わせずにハルに言い聞かせた。
「こんな状態のハルを置いて、オレが帰るわけないって、知ってるよね?」
ハルが困ったように、オレを見返した。
ハルは分かっている。
でも、言わずにはおれなかったのだろう。
オレを見ていたハルの視線がオレの服へと移動した。
「……でも、」
いつもは言葉にしてもらうまで、何を考えているのか、あまり分からない。
だけど、今はハルが考えている事が手に取るように分かった。
深夜1時……ハルはもちろんのこと、普段ならオレだって眠っている時間。
宵っ張りな高校生も多いだろうけど、オレはどちらかというと朝型だ。オレが毎朝早起きして走り込んでいることはハルも知っている。



