背筋にイヤな緊張が走った。
おじさんやおばさんが不在な日は多い。
だけど沙代さんは、住み込みだ。沙代さんが外泊するような日は、ハルは隣のじいちゃんちに泊まりに行く。
何かあったんだ。
ハルの身体のことを知ってる沙代さんが、何もなしにハルを一人にするなんて、あり得ない。
何かがあって沙代さんは出かけて、今、ハルは一人。
でもって、一人で何の問題もなければ、ハルが、こんな時間に電話をかけて来るなどありえない。
「ハル、オレ、今から行くから」
「カナ、でも……」
ハルは言い淀みつつも、ダメと言わない。
心細げな、とても不安そうな気持ちが、スマホ越しにひしひしと伝わってくる。
「ハル、玄関のドア開けられる?」
ハルんちはセキュリティもバッチリだ。
夜、一人でいるなら、今は、ロックを解除しなきゃ窓も開けられないはず。
動けないなら、じいちゃんたたき起こして……。
「開けに……行く」
「ムリするなよ? しんどかったら、オレ、じいちゃんちに行って鍵もらってくから……」
「大丈夫」
「すぐ行くから! 2分か3分、待ってて!」
言いながら、オレはもう走り出していた。
「電話、切らないで!」
スマホに向かってそう叫ぶと、通話のままに、画面表示だけ消した。
オレは通りがかりにノックもなしに、兄貴の部屋のドアを開けた。
「ハルんとこ、行ってくる!」
書き置きしていくのも、時間がもったいない。
「え? 叶太?」
こんな時間に何を……とか何とか、兄貴の声が背中越しに聞こえたが、当然、ムシして、オレは階段を駆け下りた。



