「……そりゃ、ICUはムリだよね?」

「ハールー」



思わず、後ろからハルを抱きしめる。

何かにつけて、やっぱりハルはオレより随分と淡泊だと思う。



「ハルは寂しくないの?」

「……んー。慣れてるしね」



確かに、いつだって一人で入院していたのだから、慣れているのかも知れないけど。

ハルはしばらくクスクスと笑った後、ふと黙り込んだ。



「……ごめん。……ウソ」

「ウソ?」

「本当はね……」



とハルは振り返って、オレを見上げた。



「本当は、カナと一緒にいられて、とても嬉しかった」



ハルはにこりと笑う。



「ありがとう、カナ」



ハルはスリッパを脱いでベッドに上がると、あぐらをかいて座るオレに、ぎゅっと抱きついて来た。



「わたし、入院するのが、こんなに嫌じゃなかったの……初めてだった」

「ハ……ハル!?」



ちょっと待った!!

ここ、ベッドの上なんですけど!

ハル、もしかして、オレの忍耐力試してるの!?



って、そんな訳があるはずもなく、条件反射で抱きしめると、ハルは無邪気にオレの腕の中で丸くなった。



「……やっぱり、家はいいね」



ハルはポツリとつぶやく。

オレはハルの頭をそっとなでた。

思えば、この部屋でハルとゆっくり過ごしたのは手術前の二泊三日だけだ。後は、様子見の外泊が数回。



……一人でこの部屋にいる時間は、本当に寂しかった。



二人のために用意した真新しい家具は、逆にハルの気配を消してしまって、いたたまれなかった。

けど、あの墨絵のように寂しかった部屋が、ハルがいる、ただそれだけで、今はカラフルに色づく。




久しぶりの自宅に安心したのか、ハルはそのままオレの腕の中でうとうとし始めた。



「ハル、おかえり」