……なに、これ。
勢いでグラス半分くらい飲んでしまったけど、とっても綺麗な葡萄色だったのに全然美味しくなくって、喉の乾きもまるで満たされなかった。
でも、口着けちゃったし、最後まで飲まなきゃ……ダメ?
「……お、おい! 陽菜、それジュースじゃな……っ!」
やっぱり、変な味。
もう飲んじゃったものを吐き出す訳にもいかず眉をひそめていると、なぜか慌てた様子のお兄ちゃんにグラスを取り上げられてしまった。
「え!? ハルちゃん、これ飲んだの!?」
「バカ晃太、なんでこんなとこに置くんだよ。早く誰か呼んで来い!」
口の中が変な味でいっぱい。
「……お兄ちゃん」
「ん? 大丈夫か!? 気持ち悪くないか?」
「このジュース……美味しくない」
「あー、ジュースじゃないからなぁ」
お兄ちゃんは通りかかった人から何かを受け取ると、わたしの口元に当てた。
「陽菜、水飲んで?」
……水?
そう、わたしが飲みたかったのはお水だったんだ。
言われるままに、ごくごくと飲み干すと、なぜかお兄ちゃんがホッとしたような顔をした。
「なに? 陽菜、ワイン飲んじゃったの!?」
気が付くと、目の前にママがいた。
「……なんで、ママなの?」
「え?」
「……カナが……良い」
口をとがらせてうつむくと、ママがお兄ちゃんと目を見合わせた。
ママじゃないし、お兄ちゃんじゃないもん。
「陽菜、部屋で少し休もうか」
「……や。……寂しい」
カナがいない。
どうしていないの?
今日はずっと一緒だと思ったのに。
今日からは、ずっと一緒だよって言ってたのに。



