目の前には教会の大きな両開きの扉。
「準備は良いですか? 開けますよ」
係の人の言葉に「お願いします」とパパが言う。
それから、パパは小声でわたしにささやいた。
「陽菜、驚くなよ?」
「え? なあに?」
何のことかと思っている間に、茶色い大きな木の扉が開かれた。
さっきまでぐもっていたパイプオルガンの荘厳な音が一気に押し寄せる。
赤い絨毯の一番向こうから、カナの満面の笑顔が目に飛び込んできた。
わたしの緊張も一瞬どこかへ行ってしまい、ベールのせいで見えないと分かっていてもにこっとほほ笑みかけてしまう。
そのままパパにエスコートされて、赤い絨毯の上をゆっくりと歩く。
教会の中に足を踏み入れた瞬間、思わず立ち止まりそうになり、パパに「陽菜」と促された。
わたしたちはまだ17歳の高校生で、
ここは住んでいる街からは遠く離れた別荘地で、
わたしの体調次第では、お式は延期になる可能性も高くて、
だから、結婚のことは誰にも知らせていなくて……、
今日のお式に参列するのは身内だけのはずで……、
わたしの家族とカナの家族の全員合わせても両手にも満たない人数のはずで……。
だから、ベンチの1列目にしか人はいないはずで……。
なのに、なんで、こんなに……溢れんばかりに人がいるの?



