それから、ママはソファに座るわたしの前で腰をかがめて、両手を取った。
「本当におめでとう、陽菜。まさか、こんなに早くお嫁に出すなんて、思ってもいなかったわ」
ママが言うと、パパが隣から、
「陽菜は嫁に出すんじゃない! 叶太くんが陽菜の婿に来るんだ!」
と主張した。
「やーね、同じことじゃないの」
パパはさすがに大人気ないと思ったのか、小声で
「全然違うだろう」
と呟いた。
わたしがクスクス笑うと、パパは照れくさそうにあごに手をやった。
控え室の窓からは青々と茂った木々が見え、木漏れ日が差し込む。
空は雲ひとつなく真夏の快晴。
だけど場所柄、うだるような暑さはなく、日陰に入れば過ごしやすい至って気持ちが良い気候。
パパはタキシードを、ママは留袖を、そして、わたしはウェディングドレスを身にまとう。
見下ろすと、少しの動きにも反応してふわりふわりと揺れる白いドレス。
ああ……本当に結婚するんだと思ったら、熱い何かが胸の内からふわあっと浮き上がってきて……。
なんて幸せなんだろうと、心の底から、色んな想いが溢れ出してきて……。
パパとママの子どもに生まれて、本当に良かったと……。
パパやママや、お兄ちゃんや、おばあちゃんやおじいちゃんや、広瀬家のみんなの顔が浮かんできて……。
それから、カナの笑顔が……。



