ハルは待たなくて良いと言っていたけど、オレは病室で宿題をさせてと言ってある。
エアコン効いてるし、ハルには会えるし最高……と言ったら、ハルは笑っていた。
広々した特別室には、大きな応接セットが置かれていて、勉強する場所には事欠かない。
と言うわけで、場所を移してリュックから参考書を取り出した。
宿題と言ったから、ハルは夏休みの宿題だと思っている。けど、オレがやるのは、そんなものよりずっと大切な明兄からの宿題。
明兄に、金のなる木の育て方を教えてもらうための勉強。
物騒な名称だけど、勉強中なのはいわゆる投資。
一ヶ谷と篠塚の2人に、二度とハルとオレに近づかないように釘を刺すため、明兄は100万近い大金を気軽にポンと使っていた。
その出所が、投資だと言う。
確かに、今時はその手の不労所得の情報が溢れている。
オレは、喉から手が出る程、その「金のなる木の育て方」が知りたかった。
聞いたら、明兄は、
「まずは自分で勉強しろ。試験に合格したら教えてやる」
と言った。
「試験は面接。面接官はオレ」
その言葉を受けて、オレはFX、株式投資、不動産投資、先物まで諸々、気合いを入れて勉強してきたという訳だ。
勉強しろと言われて最初、親父の本棚を覗いてみたけど、小難しい経済学やら経営学の本ばかりで、「バカでも分かる初めての投資」みたいな本は一冊もなかった。
明兄にお勧めを聞いたら、冷たく「三省堂に行ってこい」と言われた。素直に街に出て三省堂に行き、山ほど並ぶ本の中から一番簡単そうなのを購入した。



