「ところで、ハル、どんな式にしたい?」



カナはタルトを一瞬で食べてしまい、その後は、わたしが食べるのを楽しそうに見ていた。

そして、わたしが食べ終わると、待っていましたとばかりに、ローテーブルの上に雑誌の山をドサリと置いた。



「え? 結婚式、するの?」

「しない訳ないでしょうっ!?」



何言ってるの、とでも言いたげに、カナは目を丸くした。

見ると、カナが置いたのは結婚情報誌らしく、わたしより大分年上の綺麗なお姉さんがウェディングドレスを着て満面の笑みを浮かべていた。



「そっか、パパやママたちも、きっと見たいよね」



パパやママだけじゃなく、きっと、おじいちゃんもおばあちゃんも……。

わたしが結婚するなんて、誰もそんな未来は予想していなかったと思う。



快く結婚を許してもらえたのだし、花嫁姿を見せるのは親孝行の絶好の機会かも知れない。



「っていうかね、ハル。オレが一番、ハルのウェディングドレス姿を見たいんだからね?」



わたしの思考があらぬ方向に行っているのに気付いたのか、カナは苦笑いしながらわたしの顔を覗き込んだ。



「ハルはウェディングドレス、着たくないの?」



そう聞かれて、思わず首を傾げてしまった。

女の子なら、誰もがあこがれる……かも知れない結婚式。



でも、パパたち同様、わたしだって、そんな未来は想像もしていなかった。

一生、自分には縁がないと思っていたんだもの。急に頭は切り替わらない。



カナだけが、そんな夢みたいなことを本気で考えて、実現への道を創ってしまった。