前半得意そうだったカナは、後半でシュンと肩を落とした。

それが、やけに可哀想で、思わず、カナの背に手を回した。



「……ありがとう。……すごいね、カナ」



その瞬間、カナは一瞬、息が止まるほどの力でわたしを抱きしめた。

そして、わたしが小さく咳き込むのを見て、「ごめんっ」と慌てて力を緩めた。

うっとりとカナに見つめられる。



「ハル……好きだ」



カナはとろけるような笑みを浮かべて、わたしにキスをした。

いつもなら、そのままスッと遠ざかっていく唇は、離れることなく、わたしのそれをむさぼった。

何が起こっているのか分からないままの、カナとの初めての大人のキス。



キスの後、息が切れて、はあ、はあと肩で息をすると、カナが慌てふためいて「ごめん!」と謝ってきた。

優しく、優しく、髪をなでられ、頰にキスをされ、それから、また抱きしめられた。



「ねえ、ハル」



カナは一度身体を離して、わたしの目をしっかりと見て続けた。



「オレと、……結婚して?」



優しい、優しい、カナの目が、顔が……気が付くと歪んで、ゆらゆらと揺れていた。



「…………はい」



私の目からは、また大粒の涙があふれ出し、ぽろぽろ、ぽろぽろと、こぼれ落ちた。



「ハルっ!!」



カナが大きく目を見開き、それから、ゆっくりと満面の笑顔を浮かべた。

カナに抱きしめられ、わたしもカナを抱きしめる。

カナのぬくもりが、カナの気持ちが、カナのすべてが愛しかった。



幸せで、幸せで、……幸せで、幸せで、

カナのぬくもりを感じながら、気が付くと、数ヶ月ぶりに心の平穏を手にしたわたしは、

カナの腕の中で暖かい充足感に満たされて、ゆっくりとまどろみ、穏やかな眠りの世界へと落ちていった。