……いけないこと? 聖域? いったい何の話?
「オレさ、ハルとは、その……婚前交渉は絶対ダメだと思ってて」
……婚前交渉? 結婚前に何か交渉する必要があるの?
カナはわたしの反応を見て、困ったように眉をひそめた。
「……ハル、意味、分かってない……よな。
あのさ、ハルはぜんぜん気づいてないけど、……オレ、さっきから、もうどうにかなりそうなくらい、ハルが欲しいよ?」
「え? ……なに?」
わたしが欲しい? ……それってどういう意味?
そのまま、カナはずいぶんと長い間沈黙した。
何も言わないままに、視線を彷徨わせて窓の方を見たり、ドアに目をやったり、それから、チラッとわたしを見たり……。
何かに悩んでいるようで、口を挟むのも申し訳なくて、わたしはじっとカナの言葉を待った。
「………あのさ、」
「うん」
「えーっと、」
「うん」
「ハルは……」
カナはそこでまた、1分近く沈黙。
その後、意を決したように両手の拳をギュッと握りしめた。
「あのさ、ハルは、赤ちゃんを……どうやって作るか、知ってる?」
「……え?」
一瞬、何を聞かれているのか分からなかった。
けど、カナが真っ赤になっているのを見て、ようやく、いわゆる男女の営みについて聞かれたのだと悟る。
その瞬間、今度はわたしが首まで赤くなった。
聞かなかったことにしたい。
けど、答えなきゃ、カナに申し訳なさすぎる。
だってカナは、ずいぶんと勇気を振り絞ったという様子だったから。
「……あの。……はい」
なぜか丁寧語で、わたしは答える。



