「ハル、歩ける?」
「あ、うん。……ごめんね。なんか、すごく懐かしくて」
「ああ、久しぶりだもんな?」
カナはホッとしたように笑って、軽くわたしの背を押した。
「部屋に行こうか?」
カナの後から部屋に入る。
窓の外に見える青い空と緑の木々。
ベッドと勉強机、本棚、ローテーブルと大きなクッション。
そんな風景は変わらないのに、どこかに感じる違和感。
「模様替えした?」
「うん。って言っても、身長が180超えた時にベッド買い換えて、向きを変えただけだけど」
「そっか。確かにベッドの向き違うね」
デザインの違いは思い出せなかったけど、全体的に大きくなって向きが違うのは確か。
中学生の頃、わたしもカナも今より大分、背が低かった。
懐かしいと感じつつも、すべてを同じと感じられないのは、わたし自身が成長したせいもあるかもしれない。
そんな事を思いつつ、トールサイズのベッドに近寄り、座る。
ベッドの向きが違うだけで、座った時に見える景色が違う。
まるで初めての場所に来たみたいで、なんだかとても新鮮だった。
幼い頃から、何度も何度も訪れた場所なのにね。
「あー、えーっと、……」
「あ……ごめんね」
いけない。
また、自分の世界に入り込んでた。
慌ててカナの方を見ると、何故かカナは困ったような顔をした。
「……なんか飲み物持ってくるけど、ハル、何が良い? ジュースかお茶なら、どっちが良い?」
「カナは?」
「麦茶かな」
「じゃあ、わたしも」
「了解。ちょっと待っててね」
カナが部屋を出た後、改めてぐるりと見回す。
やっぱり懐かしい。
……カナの部屋だ。
本棚にはバスケ雑誌と空手の本……の他に、なぜか、
「……年収300万からはじめる不動産投資?」
そんな本をはじめ、株式投資やFX、様々な投資に関する本が10冊以上も並んでいた。
カナが投資に興味があったなんて、まったく知らなかった。
初心者向けっぽいものばかりだから、おじさまのってことはないだろう。



