酸素が足りなくなっているのは本当で、あんまり良くないのも本当で……。

だけど、救急車で運ばれるのは嫌だった。

そこまでの状態でもないのは、自分でもよく分かってる。



「どうして欲しい? どうすれば楽になる?」



田尻さんはわたしの背中をさすりながら、そう聞いてくれる。

きっと怖いと思うのに、わたしの意見を尊重しようとしてくれる。



「ごめん。しゃべるなって言っておいて、聞くなよって感じだよね?」



田尻さんの苦笑い混じりの言葉に、震える手で、バッグの中から携帯電話を取りだした。



「……おばあ、ちゃ、……呼んで」

「おばあちゃん? その名前で入ってる?」

「……ん」

「あー、ガラケー、どうやるんだっけ?」



そう言いながらも、田尻さんはカチカチと迷わず操作する。



「迎えに来てって言えば良い?」

「……ん」



じき、おばあちゃんが出たのか、田尻さんが話し出した。



「あ、すみません。わたし、陽菜さんの友だちの田尻麻衣って言います」



ごめんね、こんな面倒なこと、頼んで。



「陽菜さん、今、うちにいるんですが、具合が悪くなってしまって……」



こんなはずじゃなかったのに。

少し前まで、とっても楽しかったのに。



「あ、はい、住所は……」



田尻さんがおばあちゃんに、この家の場所を伝え始めた。



これで、20分もしたら、おばあちゃんが迎えに来てくれる……。