「なんで、驚くの?」
小首を傾げて問いかけると、
「……ううん。まさか本当に話してくれる気になるとは思わなくって、」
と、そう言いながら、田尻さんは嬉しげに笑った。
「じゃ、お昼休みとか? ……は、叶太くんがいるか」
今年はしーちゃんとカナと斎藤くんと食べる事が多い。
でも、それがなくても、学校で話せるような内容ではない……。
「放課後とか? えーっと、保健委員会とか、近い内になかったっけね? ……ダメか。先に、牧村さん送ってくよね」
一生懸命、カナにばれずに話せるように考えてくれる田尻さん。
「あーねえ、いっそ、休みの日ってのは、どう? 今度の土曜日とか、空いてる? うち、来ない?」
「え? 田尻さんのお家?」
「そう。……えーっと、学校から電車で3駅のA駅。知ってる? 車だと20~30分かな」
そう言いながら、田尻さんは思い出したように「あ、体育館行かなきゃ」と言った。
「ごめん! 返事は後で聞かせて。先に行くね。……牧村さんはゆっくり歩いて来て! わたし、先生に遅れて来るって言っておくから」
わたしの返事を待たずに、田尻さんは手を振ると、駆け足寸前の早足で歩き出した。
みるみる、田尻さんの背中が遠ざかっていく。
わたしの返事は、もう決まっていた。
土曜日に田尻さんの家にお邪魔する。
学校ではできない話しをしに行くだけなのに、
あまり楽しくない話をしに行くのに、
友だちの家に遊びに行くなんて経験がほとんどないわたしの心は、不思議なくらいに浮き立っていた。
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