「ねえ、何を悩んでるの?」
「何を……って?」
言葉にならなかった。
去年までと違い、階段がないから、歩きながらでも、ゆっくりなら話せなくはない。
けど、言うべき言葉が見つからない。
ううん。
心の中にはあるのだけど、言葉にできなかった。
なんと答えようと思っている内に、いつの間にかうつむいて立ち止まっていたらしい。
「牧村さん、……大丈夫?」
と田尻さんに顔を覗き込まれて、慌てて顔を上げた。
「ご、ごめん」
「わたしは良いけどさ。……ってか、良くないんだ、本当はっ」
田尻さんは、はあーっと大きなため息を吐いた。
「……あの」
「ああ、牧村さんがどうこうじゃなくてさ、わたしの問題」
田尻さんの問題?
「だから、気にしないで良い……って言いたいんだけど、ダメなんだよね」
「……何が?」
わたし、何かやらかしちゃったかな?
「いや、わたしが気になるってだけ」
「気になる?」
「……牧村さんが元気ないと、なんか、すごい気になるのよ」
田尻さんは、「何言わせるのよ」と小声で呟き、明後日の方向を向いた。
心なしか、顔が赤く見える。
「えっと……」
心配してくれてる……んだよね?
田尻さんは、ふうっと一息吐くと、またわたしの方を見た。
「牧村さん、何か悩んでるでしょう?」



