杜蔵学園大学へ内部進学するクラス。
この一年を順調に過ごして、足切り点より高い成績をキープできれば、クラスメイト全員が同じ大学に入学することになる。
外部の大学を志望する子たちは、それぞれの希望に合わせて理系クラス、文系クラスに分かれた。
カナとは何事もなかったかのように過ごしている。
誕生日の前の日までと同じ毎日。
あれから、一度も『結婚』という言葉は聞いていない。
わたしも口にしていない。
だけど、カナもわたしも、お互いにその言葉を意識しているのは確かだった。
☆ ☆ ☆
「陽菜、叶太くん、おはよう」
カナと教室に向かう途中で、しーちゃんに会った。
「おはよう、しーちゃん」
「志穂、おはよう」
しーちゃんはわたしと合流すると、すぐに歩調をゆっくりにする。
今年は南校舎の一階が教室。おかげで階段はない。
本当にありがたかった。
「今日、委員決めだね。陽菜、図書委員やる?」
「やらないよ?」
しーちゃんの言葉に即答。
「え? なんで?」
しーちゃんの中には、1年生の時、委員決めの日に病欠して、図書委員やりたかったなと、ポロリとこぼしたわたしのイメージがあるのかも知れない。
「んー。よく休むし、当番のシフトとかで迷惑かけるしね」
そう言うと、しーちゃんはわたしの肩をポンと叩いた。
「わたし、できない時は手伝うから、立候補したら?」