10時過ぎに、カナが来た。
いつもはカナを見ると、心がほんわか暖まる。
今日は逆に、お腹の中に渦巻く重くて暗い何かが、重苦しくて仕方がなかった。
「ハル、おはよう」
カナはいつものように、わたしの側に来て、わたしの顔を見て、嬉しそうに笑った。
「おはよう」
声が固くなるのを止められない。
カナを嫌いになったんじゃない。
そうじゃない。
だけど……。
「……ねえ、なんで、カナがわたしにプロポーズすること、……みんな知ってたの?」
気が付いたら、思わず口に出していた。
「え?」
「……パパもママも、わたしが望むなら、好きにしていいって言うの」
カナの顔を見ることができずに、うつむいて唇を噛み締めた。
「誰も……驚いてなかった」
「ハル」
「……知らなかったの、わたし……だけ?」
「え…と、それは……」
カナは答えない。
答えないのが、一番の答えって、本当にあるんだね。
そっか、わたし以外、みんな知ってたんだ。
「……ねえ、なんで、パパやママが、結婚していいって言うの?」
視線を上げて、カナを見る。
「わたし、まだ高校生だよ? なんで? どうして、わたしが何も言ってないのに、結婚なんて許してくれるの!?」
大きな声で一気に言うと、息が切れた。
まだ熱も下がっていない。体調が万全じゃないのを思い出す。
ハアハアと、自分の呼吸の音がうるさくて、耳をふさぎたくなった。



