うつむいたハルの顔を覗き込み、オレは許しを乞う。



「ハル、本当にごめんね」



だけど、ハルは目を合わせてくれなかった。



「ハル、改めて言わせて……オレが18になったら、結婚して欲しい」



長い長い沈黙がオレたちの間を漂う。

ハルは目を伏せたままで、オレの頭には悪い予感しか浮かばない。



「カナ、ごめん。……できないよ」

「ハル?」

「考えられない」

「ハル、あの……急なことで驚かせたとは思う。けど、」



だけど、ハルは、それ以上は聞きたくないという様子で、目を伏せて、

オレが昨日置いていったエンゲージリングの入った紙袋をオレの方に押しやった。



「えっと、ハル……」



せめて、これは誕生日プレゼントとして受け取って、と言いたかった。

けど、ハルの目が潤んでいたから、

そして、ただの誕生日プレゼントにしては、これはあまりに重すぎる指輪だから、

ハルの体調が明らかに悪そうだったから、

だから、今はこれ以上、ハルを悩ませちゃいけないと思ったんだ。



「ハル、『今は』考えられない……って思っておくね」



ハルが顔を上げた。



「ごめん。オレ、先走ったかも知れない。けどね、本気だよ。

オレは、ハルしか考えられないし、朝も昼も夜も、いつだってハルと一緒にいたいと切望してる。

堂々とハルのパートナーを名乗りたい」



ハルの表情は固く強張ったまま動かず、オレは何と言っていいのか分からないまま、ハルの頬に手を添えた。



「愛してる。大好きだよ、ハル」



ハルは数秒の沈黙の後、伏せていた顔を上げた。



「……わたしも」



ハルの目から、ずっと我慢していただろう涙があふれた。




一体、どこからやり直せば良いのか?

プロポーズまでの長い道のりを思い出し、オレは途方に暮れていた。

それでもハルとの結婚を諦める気など、欠片もなかった。