そう言えば、とお兄ちゃんが言った。
「後で、叶太が来るって」
わたし、きっと困った顔をしていた。
お兄ちゃんはそっとわたしの頭をなでた。
「……今日は、会ってやれ」
いつもだったら、「追い返してやろうか?」くらいは言うのに?
なんで?
……なんで、今日に限って、そんなことを言うの?
「お兄ちゃんも……知ってたの?」
固い声、硬い表情のままに聞くと、お兄ちゃんは少し迷った後、
「ああ。知ってた」
と言った。
心の中がもやもやして、お腹の辺りにもやもやが溜まってしまって、……出てこない。
「あれ、取ってもらえる?」
勉強机の上にあるローズピンクの紙袋を指さす。
ママが言っていた、カナがわたしにはめた指輪が入っている紙袋。
「ああ。もちろん」
お兄ちゃんは、スッと立ち上がると、無造作に紙袋を取り、
「はい」
と、わたしに手渡してくれた。
「ありがとう」
サイドテーブルに置こうとして、朝食のトレーが残っているのを思い出す。
お兄ちゃんがわたしの動きに気付いて、トレーを勉強机に移し、元々置いてあったティッシュケースや水差しを戻した。
わたしは紙袋をサイドテーブルに置いた。
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