翌朝、出社前にパパが寄ってくれた。
忙しいのに、わたしの氷枕を新しいのに替えてくれて、それから、いっぱい頭をなでられた。
まるで小さな子どもにするみたいに。
「ずっと、パパだけの娘でいて欲しかったのにな」
と、パパはポツリとつぶやいた。
……パパ?
「響子さんと結婚した時には、彼女の両親はもう他界されていたからなぁ」
と、パパはまたつぶやく。
それから、意を決したようにわたしの目をしっかりと見つめた。
「……陽菜が、好きにして良いんだぞ? 結婚したからって、陽菜がパパの可愛い娘だってことには、何も変わらないんだから」
わたしが何も言えないでいるのを、体調が悪いからだと思ったのか、感激しているからだと考えたのかは分からない。
パパはそう言うと時計に目をやり、再度、わたしの頭をぐりぐりとなでてから、
「行ってくるね」
と部屋を後にした。
わたしは、行ってらっしゃいという言葉すら、口にすることができなかった。
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