「……ねえ、なんで、カナがわたしにプロポーズすること、……みんな知ってたの?」
普段のハルなら出さない硬い声。
「え?」
「……パパもママも、
わたしが望むなら、好きにしていいって言うの」
ハルはうつむいて唇を噛み締めた。
「誰も……驚いてなかった」
「ハル」
「……知らなかったの、わたし……だけ?」
「え…と、それは……」
言葉に詰まると、いつになくハルは厳しい声で言った。
「……ねえ、なんで、パパやママが、結婚していいって言うの?」
疑問系でありながら、ハルはオレの答えを待たずに、次の言葉を綴る。
「わたし、まだ高校生だよ? なんで? どうして、わたしが何も言ってないのに、結婚なんて許してくれるの!?」
一気に言って、ハルは苦しそうに大きく何度も肩で息をした。
慌てて、オレはハルの背に手を伸ばし、ゆっくりとハルの背中をさする。
なんで? なんでって、……オレが話したからだ。
オレが許可をもらったからだ。
けど、言葉に詰まる。
どんなにオレたちが想い合っていても、オレたちは未成年で……、まだ高校生で……、ハルの両親はもちろん、オレの両親の許可なく結婚はできない。
だから、オレは先に根回しに走った。
プロポーズは、その後で良いと思っていた。
オレは自分の失態に、ようやく気付いた。
オレはどうしてもハルと結婚したかった。
だから、ハルもそうだと思い込んでいた。
けど、ハルは結婚なんて、考えてもいなかったんだ。
オレが最初に話すべきは、ハルだった。
痛恨のミス。
だけど、順番の間違いは今更取り戻せない。
「ごめん。……ハルに一番に話さなきゃいけなかった」



