「全員集まったかな?…じゃあ今から行く島なんだけど、その島には住人もいるからね」
念のため、と扇は言った。
それには少し驚くが、この世界は魔法を使う世界だ。
異次元に人がいるのではないかと昔から言われている。
「本当にいたんだな……」
その話はもちろん、堺人たちも知っている。
「だけど、転移先は住人がいる町とは離れた場所だし
住人があまり来ない所だから、めったに会えないかもしれないけど。」
それには、ちょっとがっかりする堺人たち。
自分たちとは違う世界に住む人々を見てみたかったのだ。
それから、寮を出て数分後ある場所に着いた。
そこは、学院に続く繁華街を少し離れた時計塔。
グリムズがよく現れる場所だ。
「さて……
グリムズの同志たちよ、
我らを祖の国に
我らが愛するグリムズへの道を示したまえ。」
なんだか宗教のような詠唱を口にする扇。
すると、鐘の下のちょうど堺人たちがいる足元に魔法陣が現れる。
普通の魔法陣とは違い、簡単に表すと方位磁石のようなものだ。
学院とその反対方向に向いている。
「転移……E-5864 我の祖国 アルカ島へ」
扇が右手を真上にかざすと一瞬にして、消えた。
堺人たちは意識が飛びそうになったためその場で踏ん張る。
燐やアーミャ、扇、夕凪は慣れているようだ。
「……大丈夫かな?これ……」
. .
アーミャは苦い顔をして、芝生の上で倒れている、堺人たちを見る。
「大丈夫…じゃないかな?」
夕凪も苦笑いでそう答えた。
燐は堺人の側にしゃがんで、堺人をゆする。
「堺人…大丈夫?」
「…う…うん?」
堺人は目を開けると目の前に燐がいて ギョッ とする。
「うわっ!びっくりした…」
近すぎる燐は首をかしげる。
(いや首をかしげられても……近すぎるよ!)
堺人は なんでもない と言いつつもそんなことを思っていた。
それにアーミャは密かに笑いながらもカインや紅葉、柳を起こす。
「ついたのか?」
転移の途中で意識を失った4人は周囲を見回す。
そこは、小さめの草原にその先には森があり、森からは小川が流れている。
森の反対は崖になっているようで、その先がない。
その、崖近くにログハウスが2つあった。
自然豊かな場所ではある。
である ではなく ではある。
なぜなら、草原のそこら中が草がなく土が日光を浴びている。
森も一部が木が焼けてそのままの状態になっており、明らかに人によるものだった。
「お帰り、扇」
そこに、1人の少年がこちらに向かってきていた。