才華龍学院 Ⅰ


「やっほ~」
「……………!」

ヒトヤは、いつものように体育座りになり、顔を下に向けていると、元気の良い声が聞こえ頭をあげる。

「……誰」

ヒトヤは目の前にいた少女を睨み付け、低い声で言った。

「私は リオウ・アーリアだよ! 君は?」

リオウはニコニコと楽しそうな顔で聞く。
ヒトヤは視線をリオウから外し何も言わない。

「ねー、聞いてる?」
「………………」
「………………」
「………………」

長い沈黙。
ヒトヤは横を向いたまま、リオウはヒトヤをジーと見ていた。

「……帰れ」

沈黙を破ったのはヒトヤだった。
だが、その声は低くて冷たい。

それでも、リオウはジーと見ている。

「……何」

流石に何も言わないリオウが怖くなったヒトヤはリオウに視線を向けた。

「やっと、こっち向いた!」
「はぁ?」

意味が分からずつい口に出てしまった。
リオウはニコニコとしたまま、またヒトヤをジーと見る。

「……はぁ、ヒトヤ・アルデール これでいい?」

ヒトヤは面倒になり、自分の名を言った。
心の中では 名前知ってるだろ と思っていた。

「うん!よろしくね!」

リオウは ニカッ と歯を見せて笑った。

「なんか、ヒトヤって悲しい眼をするんだね。」

リオウはヒトヤの赤い瞳を見て言った。
ヒトヤはまた、わけがわからない と首を傾げる。

「……町を消滅させたって、父上が言ってたけど本当なの?」

リオウは直球に聞いた。
ヒトヤは眼を鋭くし、 帰れ! と怒鳴った。

「……ほら、また悲しい眼をしてる。」

リオウはそれだけを言って バイバイ とさっていった。

「…………」

ヒトヤは なんなんだ とポカーンとしていた。

「クスッ ヒトヤその顔……フフ」

いつの間にか朧月がいた。
ヒトヤは顔を赤くして フイッ とそっぽを向いた。

「……あの子…俺の眼が悲しいって……」
「気になりますか?」

ヒトヤは呟くように言うと朧月が牢屋の前に座った。

「…別に」

そう言いながらも、リオウのことを考えていた。
だが、すぐやめた。

「人は信用できない。
ましてや仲間なんかいらない。」

眼を細めてそう、呟いた。

「……そうですか」

朧月は、少し悲しい表情をした。
そしと、チラッと廊下の曲がり角を見た。

~・~・~・~

「人は信用できない。
ましてや仲間なんかいらない。 か……」

リオウはあのヒトヤの呟きを聞いていた。

監獄の通路は初めて来たときに覚えたため、すぐに転移魔法陣のある場所についた。

『そう、落ち込むな』

転移してから、雷神が出てきた。
リオウがヒトヤと会う前に戻っていたのだ。

「そう言えば、なんで出てこなかったの?」
『…今のヒトヤの様子を見たかったからな』

雷神は悲しい顔で言った。

「暗くなっちゃうね。森に行って修行しますか!」

リオウは ニカッ と笑う。
リオウの笑顔はその場を明るくする。
まるで太陽のように。

(今のヒトヤには太陽が必要だな……
それが分かって、朧月と言うやつは会わせたのかもな)

朧月のあの行動に納得する雷神。
だが、その笑顔を見せているのは雷神と朧月、ヒトヤだけだ。

両親や他の領主達の前であの無邪気な笑顔は見せない。

『お前はヒトヤと似ているな』
「?何か言った?」
『いや』

そう?とリオウは首をかしげてまた歩き出す。