ある日、リオウは父に連れられてある建物に来ていた。
「父上…ここは…」
ずっと森で修行していたリオウは家と森以外には疎い。
「ここは、異次元空間の入口だ。」
父はいつもより、低めの緊張感のある声で答えた。
「これから行くのは次元監獄だ。
1つの島まるまるが監獄になっていてな、危険な犯罪者が集まっている。」
父は、その入口を管理する建物に入り、受付をすませる。
「ユベラ島はな、次元監獄の唯一の入口がある島だ。
当然、犯罪組織のメンバーが襲って来ることもある。
リオウは、この監獄を犯罪者たちから守って欲しいのだ。
次元監獄には危険な者しかいない。
それが、世に放たれてしまったら危険だ。」
父はそう言いながら、転移の魔法陣の中央に立つ。
リオウも父の隣に並ぶ。
すると、急に景色が虹色へと変わる。
意識をもっていかれそうな感覚だ。
リオウは、それを我慢し目をつむる。
「ついたぞ。」
父が魔法陣から出るのを見て急いで後を追う。
そこは、入口の建物よりも薄暗く日差しが一切入らないとても不気味なところだった。
(いつものところより暗い……ちょっと気持ち悪いかも…)
リオウはいつの間にか父の服の隅をつかんでいた。
父は何も言わずそのまま歩いていく。
丁度そのとき、1人の男がこちらに来る。
「久しぶりだな、朧月。」
父はそう言って、朧月と呼ばれた男に手をかわした。
「お久しぶりです、アーリア氏…こちらのお嬢さんは?」
朧月はリオウの姿に気づき、父に聞く。
「私の愛娘だ。名前はリオウ」
父はリオウの後ろに行き、肩に手をおく。
リオウは、朧月に向かって一礼する。
「そうですか、あの鬼才の!……
こんにちは、私はこの監獄の管理をしています。
凩 朧月 (こがらし おぼろづき) と言います。
どうぞよろしくお願いします。」
朧月も自己紹介しながら一礼する。
リオウもつられて自己紹介をする。
「リオウ・アーリアです。6歳です。よろしくお願いします」
朧月は、リオウに微笑みかけていたが、急に父の耳のそばでなにやら話していた。
当然、リオウには聞こえるわけがなく首を傾げる。
ただ、父の顔が暗くなったのは分かった。
朧月を先頭に監獄の中を歩いていた。
当然、日の光は一切ない廊下を。
歩いていくと途中途中に牢屋が現れる。
リオウは チラッ と見ると中にはいかにも悪党といった雰囲気のある犯罪者達がこちらを見ている。
「そろそろつきますね。」
監獄の中は脱走しても監獄から出られぬよう複雑な通路になっているため、朧月がいないと迷ってしまう。
「つきました。」
ついた場所は朧月がいつもいる部屋だった。
隣が客間となっており、そこに通された。
(子供…)
リオウは、客間とは違う方向の牢屋を見ていた。
中にはリオウと同じ年ぐらいの子供がいた。
その子もリオウに気づいたらしく、鋭い眼で睨んでくる。
だが、リオウには悲しそうにしか見えなかった。
「リオウ、どうした?」
父は立ち止まったリオウに気づき、声をかける。
「あっ、なんでもありません。」
リオウは、少年から眼を離して客間に入った。