獄との通話を終えた扇は夕凪とともに温泉に入り、寝るところだ。

「おやすみなさい。扇さん」
「うん、おやすみ~」

扇は電気を切って、ベッドの中にもぐる。

“異能なんて扇そのものじゃないか”

扇は獄のあの1言を思い出していた。

(異能そのものか……でもそれは、ひーくんも同じじゃない。

まぁ、殺もそれに入るのかな…

私は誉められるばかりだったけど、恐れられてもいたな……

でも、ひーくんや殺は

誰にも求められず、恐れられる存在。
その力を利用しようとし、罪を着せられる。)

人は信用できない。
ましてや仲間なんかいらない。

ある時、1人の少年が言った。
薄暗い牢屋の中で、ボロボロになった姿の赤色の鋭い眼がこちらをにらんで…

その時、扇は睡魔に襲われた。
スーと自然と目が閉じ、夢の中へと入った。

~・~・~・~

これは、扇が6歳のときの話し。

アルテーナ諸国 ユベラ島…
光国の東に広がる海に浮かぶ島々が集結したこの国は、貴族が多く島ごとに領主が決まっている。

その中で、ユベラ島のアーリア家は諸国でも魔法の名門家である。

そのアーリア家に天才が現れた。

リオウ・アーリア これが、天才の子供の名前だ。

少女はいくつもの魔法が使える。
とくに系統魔法は一流で6歳にしてすでに系統魔法の全ての属性の神級契約武器と契約を交わしていた。

「流石我が娘だ。他の島の者からも認められているぞ。」

リオウの父はよく誉め、魔法の練習ができるよう、リオウの望む練習場所をくれた。

そこは、何も変哲もない森だ。

自然豊かであり、草は生い茂っている。

「やっぱり、ここが落ち着くね!雷神」

リオウは誰もいないはずの1本の木を見る。
すると、そうだな と声が聞こえた。

その木によりかかる男性が現れた。
黄色の稲妻を描いたような横髪で、後ろははねっ毛。
瞳の色は髪よりも濃い黄色である。

黄色と黒色の着物を着崩して、その上から足のくるぶしまである丈の衣を着ている。

手にはリング状の腕輪をしている。

彼は雷神、神級契約武器で、雷属性の最高位だ。

「さて、父上と母上にもっと誉めてもらえるように頑張らないと!」

リオウは手を太陽にかざしながら気合いをいれた。

後に、鬼才と呼ばれるようになり、アルテーナ諸国の誇りとなった。